今年の夏
とある男性と親しくなりました
ネット上に
彼の名前を出す訳にもいかないので
仮に『骨細の男』としておきましょう
彼の身体は
身長190cm
体重100kg強なので
実際に骨が細い筈は無いのですが
まだ19歳の小僧なので
人間的な意味ではまだまだ骨細なので
このログの中では
『骨細の男』で通していきます
骨細の男と
初めて会ったのは今年の9月
まだまだ残暑が厳しく
対面した際には
私は
薄っぺらいTシャツ一枚しか着ていませんでした
初対面でしたが
お互い
存在は何年も以前から知っていて
初めて会った気はしませんでした
共通の話題も心得ていて
ガンダムのネタや
ゲームの話で大盛り上がりをし
旧知の友人の様に親しくなりました
何故
私達はお互いを
何年も前から知っていたのか・・・
骨細の男は
私と相方が付き合い始めた頃に
相方が担当した患者だったからです
看護師には
患者のプライベートの守秘義務が有るので
当初は私のネタが
一方的に骨細の男へ流れるだけでしたが
骨細の男が
私の奇怪な行動や言動に興味を持ち
ホームページや このログを観察し
いつしか
相方を通じてコンタクトしてくるようになりました
それでもまだこの頃は
私と相方が付き合い始めの頃ですので
今から5年ほど前
骨細の男はまだ15歳
高校に入りたての ちょー小僧だったので
『若い看護師をたぶらかしてる変なおやぢ』
くらいの印象だったのかも知れません
骨細の男の病気の治療には
半年の入院と数年に及ぶ通院という
かなりの時間が掛かりました
その間
治療を続けながらも
彼は大学生になり
薬剤師になる為の道を進み始めました
彼の病気の特性上
一定期間再発さえなければ
治癒に向うのですが
残念な事に
昨年の丁度今頃
12月に
病気が再発してしまい
再び入院せざるを得なくなり
過酷な治療が始まりました
骨細の男が戦ってる病は
血液の癌
白血病です
それも
タイプ的にかなり悪性の物で
生還率は相当低い病気だそうです
私は医者では無いので
詳しい事は全く解りませんが
このタイプの白血病が再発した場合
通常の白血病治療で行われる化学療法だけでは
劇的な効果は期待できないらしく
最終的には
骨髄移植をしなければ助からないそうで
骨細の男も
移植の為に専門の病院へ転院し
ドナーを捜す事になりました
ドナー選定は
決して順調だったとは言えなかったらしいですが
なんとかタイプが合致するドナーが見つかり
初夏には
骨髄移植を決行しました
恥ずかしながら
まともな病気を患った事が無い私には
入院生活や治療生活の辛さや苦しさは
微塵も理解できませんが
話に聞くと
癌の治療の化学療法は想像を超える辛さらしく
治癒した癌患者の多くは
『再発してあの治療をやるくらいなら死を選ぶ』
と語るそうです
骨髄移植に伴う拒絶反応と
化学療法の辛さは
想像を超える辛さだそうです
骨細の男は
無菌室の中で、
それらの治療を繰り返し
やっと
一般の病室に出られる様になった頃には
全身の毛は抜け落ち
筋肉は衰え、顔は浮腫み
元の姿が判らないくらいだったそうです
私は
この時期に彼に会いました
私が何故
彼に会いに行く気になったのか
私自身
理解し難い処ですが
何故だか
会わないといけない気がして
見舞いに行くという相方に同行したのですよ
彼の母親と
私の相方を含めた4人で
面会室の一部を
占領しての対面となりました
痩せてしまった筋肉のせいで
あまり大柄には感じませんでしたが
私より遥かに大きな身体を
チェック柄のパジャマに包んで
骨細の男は現れました
正直な処
直接会うまでは
十代の若者と長時間の会話など
成立する筈が無いと思っていたので
会話に詰まれば引っ張り出して
自分の技量を自慢してやろうと
得意の携帯ゲームと
ルービックキューブを持参していましたが
実際には
そんなものは必要無く盛り上がり
本人の体力も考慮して
30分くらいの面会に留める予定が
結局は
3時間以上も喋り倒していたですよ
私が受けた彼の印象は
髪が抜けて
浮腫んだ外観をしきりに気にする辺りは
やはり19の男の子だなと思いましたが
屈託の無い笑顔の奥に
死をも辞さない病と闘う
屈強な精神が見えた気がしました
そんな対面から
一ヶ月もしない内に
骨細の男は退院しました
移植後の経緯もそこそこ順調で
暫く通院して治療すれば
ハードな食事制限も外れ
外食が出来る様にもなりそう・・ということで
外食許可が出れば
真っ先に
海月食堂で食事をしようと私と約束したのが
彼の当面の目標になっていました
そしてその目標は
簡単に実現される筈だったのですよ
そう・・・
あんな
悪夢の様な事がなければ
何度も書きますが
私は医者ではありませんから
なんでそんな事になるのか理解できませんが
白血病の患者は
時折
血小板の減少に伴う出血を起こすそうで
一度出血すると
止血しにくいという厄介な症状が有り
そんな出血が
手の出せない内臓等の体内で起こると
致命的な事態になる事も多いそうです
そして
骨細の男にも
たちの悪い出血が発生しました
彼の症状は
たちの悪さでは最悪で
有ろう事か
脳内で出血してしまったのですよ
そんな事態は
担当の医者すら
想定していなかったそうです
出血の発生から
彼の容体は刻一刻と変化し
一時は
脳死判定を受けるまで悪化しましたが
生きる事への
意欲の強さがそうさせるのか
なんとか持ちこたえました
それでも
時折自発呼吸はするものの
意識は無く
自力で瞬きする事すら有りませんでした
微かに振れる
脳波レベルの針の動きと本人の若さが
奇跡を起こしてくれるのを
私を含め周囲の人々
何より、
彼の家族の望みとなっていました
時に
残酷過ぎる事実と云うものは
無情に
無慈悲に
我々に襲いかかってくるもです
ほんの2時間ほど前
我々の望みは完全に断ち切られました
もうすぐクリスマス
もうすぐ正月
年が明ければ
20歳の誕生日だというのに
私との約束を果たす事も無く
彼の体調は急変し
全ての生命活動は停止しました
骨細の男
享年、僅か19歳
無念に思うのは
私独りではない筈
こうして淡々と文章を綴りながらも
涙でモニターがはっきり見えません
せめて
彼の眠りが
安らかな事を祈るばかりです
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私も骨細の男さんに会ってみたかったです。
私の自慢の君達
三人娘の内二人は彼と同い年やし
会わせるのを楽しみにしてたのだよ
残念で仕方ないよ
>YASUさん
いやほんと・・
理不尽極まりないよ
うちの料理を
腹いっぱい食べさせてあげたかったよ